今日はSIerのメイン業務である調整業務について話して行こうと思います。 よくSIerの仕事は調整ばかりと言いますが、具体的に誰と何を調整するのかについて、この記事ではまとめていこうと思います。
SIerの構造について
まず前提として、SIerの典型的な構造を簡単に整理します。 ここを押さえておくと、なぜ調整が多発するのかがよく分かります。
- 顧客(発注元)
- SIer本体(PLとそのチーム)
- PG(パートナー・二次請け)
- PMO(プロジェクト管理オフィス)※詳細は省略
※3次受け、4次受けとなるとさらに複雑になります。

開発中に追加要望をされる場合
SIerにとって最も典型的な“調整劇場”は、開発中に顧客から追加要望が入るときです。 流れをざっくり書くとこう👇
- 顧客が営業に要望を伝える
- 営業がPLに以下を確認
- 要望内容
- 実装の可否
- 実装するならスケジュール
- PLがチームに要望を展開
- チームがPGに見積もりを依頼
- PGがチームに見積もりを返す
- チームがPLに結果を報告
- PLが実装可否・時期を判断(必要ならPMに相談)
- PLがPGに開発を依頼し、営業にも報告
- 営業が顧客に伝える
上記のように、1つの要望を何度も伝言ゲームを繰り返してPJを進めていきます。 これが調整業務のイメージです。
伝言ゲームを繰り返すことで思ってないシステムが出来上がる、、、ということについては、 実は以下の記事でまとめているので興味があれば見てみてください。 なぜSIerの現場では『本当に必要なもの』が作られないのか?
SIerでは役職によって調整相手と内容が違う
では案件の流れ方について軽く説明したところで、次に誰がどんな調整作業をするのかについて説明します。
それぞれの立場でどういう調整が必要なのかを記載できれば一番良いのですが、 量が多すぎるため今回はPJのキーマンであるPLの調整業務について記載しようと思います。
図を見てもらったら分かる通り、PLは営業、PM、PG、自分の配下という4つの立場の人とやり取りを行います。 (PMOもSIerのPMと関係深いが一旦無視する) そのいった背景もあり、調整内容が非常に多岐に渡ります。例を挙げると以下のようなものがあります。
| SIer(PL)⇔SIer(営業) | SIer(PL)⇔SIer(PL以外) | SIer(PL)⇔SIer(PM) | SIer(PL)⇔PG(PL) |
|---|---|---|---|
| 営業から、顧客の追加要望を伝えられる。PLは、開発工数や顧客満足度向上具合によって、案件を取捨選択する。そして決定した事項を営業に伝えて納得してもらう。 | メンバーからPLに対して、渡された仕事が、ある課題のため期日通り終わらない旨の相談される。PLは他のメンバーをアサインしたりして期日通り終わるように調整するか、仕事依頼元にその旨を説明して先延ばしできないか調整する。 | PLからPMに対してPGの人員が何人月足りないため、追加で稟議をあげて予算を確保できないか調整。 | PGからSIerに対して、見積りから遅延しているため、 |
上記記載したのは、PLの調整業務のほんの一部であり、実際はもっと多くの調整作業が必要となります。 こうして見ると、PLの仕事は「会話」と「判断」で1日が終わることも多いです。
調整する側と、される側の視点
私は今、PLの配下として仕事をしています。
つまり、“調整する側”ではなく、“調整される側”。
PLが関係各所と政治的な調整をしてくれているおかげで、
私たちはコードを書いたり、テストを回したりできているわけですが——
一方で、私たちには私たちなりの戦いがあります。
それが、「終わらない仕事との闘い」。
追加要望や仕様変更が雪だるま式に積み上がり、
気づけば「あと3日でこれ終わらせるの?」みたいな状況も珍しくありません。
PLもSEが今何を抱えているのか、その仕事の工数を把握できているわけではないので、 作業量過多になることも珍しくないです。
まあ噂によると、その逆もあるらしいのですが、、、羨ましい限りですね。
まとめ
今回は、SIerにおける重要な業務のひとつである「調整業務」についてまとめました。 今回は、調整業務を主とするPLを例に挙げましたが、PL配下のSEもその調整業務は行います。
私個人の感想としては、SEの7割くらいは70%作業、30%調整ですが、逆転する時期も3割くらいはある感じです。 ただ、SEと言っても任される業務は多岐に渡るので作業用多め、調整量多めの人に別れる感じかなと思います。 PGとして働いたことがないのでこれは勝手な意見ですが、PGだと調整作業はほぼ無いのかなと思います。
働く前は「調整なんて、、、」と思っていましたが、実際やってみるとかなり大変です。
システムを理解していないまま“調整だけしている人”は現場で軽視されがちなので、
あえて威圧的に振る舞うタイプの人もいますが、正直それはどうなんだろうな……と思います。
番外編:転職エージェントも“調整職”なんじゃないか
あと、かなり逸れますが、転職エージェントなんかも調整がメインの仕事なんじゃ無いかと勝手に思っています。 求職者と会社の日程調整とかですね。
その中で「舐められないように自己紹介を入れる」「相手の仕事・業界を理解している風を見せる」――
こうした振る舞いも、調整職ならではの心理戦なのかもしれないと邪推します。
以上です!

