転職サイトに登録すると、突然あらわれる 「マネジメント経験人数」 という謎の質問。
「5人以下」「6〜10人」などの選択肢を前にして、思わず固まった人も多いのではないでしょうか。

――いや、そもそも自分は“マネジメントなんて”していない。
そう思うのが自然です。

特に若手SEの場合、日々やっているのは PG(プログラマー)への作業依頼や、開発・テスト工程の進捗確認、複数タスクの優先度調整、障害対応の指示出し……といった、いわば“指示に近い業務”ばかり。
でも、これを果たしてマネジメントと呼んでいいのか? と聞かれると、胸を張って「そうです」とは言いづらい。

さらに、SIer は構造が特殊で、若手が直接かかわる人数と、実際に裏で動いている人数が大きく異なります。
そのせいで、職務経歴書の「マネジメント経験人数」欄に “何人” と書けばいいのか、途端にわからなくなるわけです。

この記事では、

  • そもそも「マネジメント経験人数」とは何を指すのか
  • なぜ多くの転職者、とくに若手SEが迷うのか
  • SIer特有の構造がどう影響しているのか
  • 面接官はこの数字で何を見ているのか
  • そして、最終的に“何人”と書くのが正しいのか

を、現場の実例とともに整理していきます。

転職が初めての人でも、この記事を読み終える頃には
「あ、こういう考え方で書けばいいんだ」 とスッキリ判断できるようにしました。

特に、
「職務経歴書のマネジメント経験人数ってどう書けばいいの?」
と悩んでいる人に向けた記事です。

1. そもそも「マネジメント経験人数」とは?

転職サイトがこの項目を聞く本当の理由

まず重要なのは、この質問は「部下の人数」を聞いているわけではないということです。

多くの転職者は、

「部下がいないから0人…?」
「若手だし書くことないな。」

と考えがちですが、転職サイトの意図はそこではありません。

転職サイトが知りたいのは「組織規模感」

この項目で見たいのは:

  • どれくらいの“規模”の組織・プロジェクトで
  • どれくらいの“影響範囲”のタスクを
  • どれくらい“主導的”に動かしてきたか

という 役割の大きさの可視化 です。

だからこそ、選択肢には
「101〜500人」「500人以上」といった、一般的な“部下の人数”としてはまずあり得ない数字が並んでいます。

つまり、この質問項目は、「何人の部下がいた?」ではなく「何人が関わる仕事を動かした?」を測る指標だと知っておくことが重要です。

2. なぜ多くの転職者が戸惑うのか?

この項目は、多くの人にとって完全に“初見殺し”です。
転職サイトを開いていきなり「マネジメント経験人数」と言われても、そもそも何を基準に考えればいいのかがわかりません。

特に若手の場合に起こりがちな誤解としては、

  • 「部下を持ったことがない=0人と書くべき?」
  • 「数字を盛った方が評価されるのでは?」
  • 「大きい数字の方が“すごい人”に見える?」

といったものがあります。

そして若手SEほど、
“自分には書けるものが何もないのでは…”
と自己評価が低くなりがちです。

でも、これはあなただけではありません。
若手のほとんどが、同じようにこの項目で悩みます。
部下を持つことが前提の職種ではない以上、戸惑うのはむしろ自然です。

安心してください。
この章以降で説明するように、若手SEは“0人ではないが、大人数でもない”という絶妙なポジションにいます。
だからこそ、この項目は正しく理解すると一気に書けるようになります。

3. SIer特有の事情:階層が多すぎて人数カウントが難しい

ここからは、特に SIer で転職する人がつまずきやすいポイントです。

SIer のプロジェクトは、多重構造になっていることがほとんどです。
例えば下図のように、元請け・二次受け・さらにその下の層……という形で、人が階層的に配置されます。

SIer

新卒で入った若手SEが担当するのは、この図でいう SE(10名)層
日常的にやりとりするのは、主にそのすぐ下の層(PGチームのリーダーなど)です。

しかし、その“下の層”のさらに下には、多くのメンバーが連なっています。
呼び方は現場によってさまざまですが、最終的に実際に動いている人数は 100〜300名規模 になることも珍しくありません。

ここで問題になるのが、「マネジメント経験人数」をどうカウントするのか? という点。

  • 直接やりとりしていた10名ほどを基準にするのか
  • それとも、裏側で動いていた 300 名規模のプロジェクト全体を基準にするのか

――ここで若手SEは必ず迷います。

この章で説明したように、
“自分が触れていた人数” と “実際に動いていた人数” の差が大きすぎる
これが、SIer の若手が「何人と書けばいいのか」で混乱する最大の理由です。

4. 若手SEの「これはマネジメント?」の境界線

若手SEが日々行っている業務には、「指示に見えるもの」と「管理職のマネジメント」が混在しています。
まずは、その境界線を整理しておくと、この後の“人数の書き方”がぐっと明確になります。

結論から言うと、若手SEが担当することの多くは、広い意味ではマネジメントに含まれる業務です。

例えば、

  • PGへの作業依頼
  • テスト工程の進捗コントロール
  • 障害対応の整理・指示
  • タスク分配
  • スケジュール調整

といった業務は、いずれもプロジェクトを前に進めるための“調整”であり、
現場では立派にマネジメント的な役割として扱われます。
評価権限こそなくても、チームが動くための中心的な役割を担っているのです。

一方で、一般に“狭義のマネジメント”と呼ばれるのは、こちら側です。

  • 部下の育成
  • 評価・査定
  • 目標設定(1on1 等)
  • 組織の編成・人材配置

これらは管理職が担うもので、若手SEが担当することはまずありません。

つまり、若手SEは
「調整という意味でのマネジメントはしているが、管理職としてのマネジメントはしていない」
という、非常に中間的な立ち位置にあります。

この“曖昧さ”こそが、マネジメント経験人数のカウントが難しい理由のひとつです。

5. 何人と書くべき?ケース別の正しい書き方

ここからは、実際に職務経歴書や転職サイトのフォームに
「何人」と書くべきかをどのように判断するか を示します。

大きなポイントはひとつだけ。
それは、

「自分が日常的に“成果責任を負っていた人数”で考えること」

です。

SIer の若手は特に、直接手を動かしてくれるメンバーと、裏側で動く大人数の差が極端に大きい。
そのため、どこを基準に人数をカウントすべきかが非常に分かりにくいのですが、実務として“成果に責任を持っていた範囲”を基準にすると判断がぶれません。

以下では、立場ごとに「どの人数を書くのが自然か」を整理します。


ケース① 若手SE(1〜4年目)

「5人以下」で問題なし。

若手SEの場合、指示を出す相手は主に PG や二次受けのリーダークラスで、多くても 3〜5 名ほどです。
評価権限も組織マネジメントもないため、人数を大きく見せる必要はありません。
“実際に日々コミュニケーションしていた人数” を基準に書くのが最も誠実で分かりやすいです。

● 書き方の例

ビズリーチのフォームなら:

マネジメント経験人数:5人以下

職務経歴書なら:

・プロジェクトにおいて、PG 3〜5名に対する作業依頼・進捗管理を担当
・障害発生時の原因調査〜改修依頼〜リリースまでの調整を実施

このレベルで、面接官は十分に「チームを動かす経験がある」と見てくれます。


ケース② PL / サブリーダー

10〜30人規模 が一つの目安。

この層は、メンバーの進捗・品質・工数に一定の責任を持つ立場になります。
評価そのものは上長が行うとしても、実質的なパフォーマンス管理を担当していることが多いため、人数規模も自然と大きくなります。

● 書き方の例

マネジメント経験人数:11〜20人

・二次受けメンバー 15名の進捗・品質管理を担当
・要員計画・工数見積もり・タスク配分を行い、納期遵守率 100% を達成

ここでは、“自分が指示を出さなければ止まってしまう範囲” を人数と捉えるのがポイントです。


ケース③ PM / リーダー層

プロジェクト全体の規模 をベースに考えます。

PM になると自分のタスクだけでなく、複数ベンダーをまとめ、予算管理や要員調整まで行うようになるため、人数規模が一気に広がります。
全体の方向性を握っている立場であれば、その範囲を人数として記載して構いません。

● 書き方の例

マネジメント経験人数:101〜500人

・最大 300名規模の業務システム刷新プロジェクトにおいて、
 PM として複数ベンダーを含む全体進捗・品質・コストを管理

このレベルでは「人数=責任範囲の広さ」を示す指標として扱われます。


ケース④ SIer以外の職種(一般転職者向け)

SIerではない職種の場合、
“直属の部下の人数” と “関与したメンバーの人数” を合わせて伝えるのが最も誤解がありません。

例として営業マネージャーなら、

マネジメント経験人数:6〜10人

・営業部門の直属部下 7名の評価・育成を担当
・他部署を含む 20名規模のプロジェクト型営業にも参画

というように、範囲の広さを補足するとより正しく伝わります。

6. 面接官の本音:マネジメント人数で“何を見ているか?”

ここまで読んできた方ならもう気づいていると思いますが、
面接官は若手に対して「部下を何人育成したか」などと期待しているわけではありません。

実際、若手SEが部下を持つケースはほぼゼロです。
それでも転職サイトが“マネジメント人数”を聞いてくるのは、別の意図があるからです。

では、面接官はこの数字を通して、候補者の何を知りたいのでしょうか。


面接官が本当に見ているのは、次のようなポイントです。

  • 大人数の中でどのように動いていたのか
    (自分の役割を理解し、周囲と調整しながら進められるか)
  • 自分の担当領域の大きさ
    (任されていた範囲が“点”なのか、“線”なのか、“面”なのか)
  • コミュニケーションの複雑さ
    (誰と、どれくらいの頻度で、どんな内容を調整してきたか)
  • プロジェクト全体の理解度
    (工程をまたいだ動きができたか、視野が限定的すぎないか)
  • 将来的なリーダー経験につながる兆候があるか
    (他者を巻き込む力、段取り力、調整力など)

ここに “部下の人数” は一つも含まれていません。


つまり面接官が知りたいのは、

「何人を管理していたか?」ではなく
「どれくらい複雑な現場で、どんな責任を担っていたか?」

という点です。

この視点で数字を見ると、
「5人以下だから価値が低いのでは…」という不安は完全に誤解だったことがわかります。

むしろ大事なのは、“何人を相手に何をしていたか” という 具体的な役割の中身

あなたがどれだけの規模の現場で、どんな複雑さを扱ってきたのか。
面接官は、その一端をマネジメント人数という数字で掴もうとしているだけなのです。

7. 転職経験談:実際に聞かれた質問と、刺さった回答例

僕自身、社会人2年目の夏に転職活動をした際、
実際に「マネジメント経験人数」について質問を受けました。

そのとき面接官が確認したかったのは、
“部下がいたかどうか” ではなく、次のような点でした。

  • どれくらいの規模のプロジェクトで
  • どの立場として
  • 誰とどのようにやりとりをして
  • どこまで主体的に動いていたか

つまり、人数というより 自分が担っていた「影響範囲」 を知りたかったわけです。

そこで僕が答えたのは、次のようなものでした。

「直接やりとりしていたのは10名程度ですが、
 プロジェクト全体では300名規模でした。
 自分はその中でPGチームへの指示・進捗管理・障害対応を担当していました。」

この説明で、面接官との認識がすっと揃いました。
若手SEであっても、担当範囲とプロジェクト規模の“両方”を伝えることで、
自分がどの位置でどれだけ現場を動かしていたかが正しく伝わると実感した瞬間です。

なお、これはあくまで若手〜中堅のケースです。
課長や部長クラスの転職であれば、当然ながら
「育成・評価を行っていた直属の部下の人数」が中心になります。
自分の立場に応じて、どの“人数”が本質を表しているのかを切り替えることが重要です。

8. マネジメント人数の“罠”:人数が多い = 優秀ではない理由

最後にもう一つ、転職でよくある誤解について触れておきます。
それは、「マネジメント人数が多い=優秀」ではないということです。

SIer のように多重構造の現場では、人数が見かけ上膨らみやすく、
プロジェクト全体が 100~300 名規模になるのは珍しくありません。
そのため、数字だけを見ると「100名を動かしていた人のほうがすごい」と思われがちです。

しかし、現場の実態はそう単純ではありません。

たとえば、同じリーダー職でも、

  • 単価重視で100名を一斉投入したオフショア体制
  • スキルの高い少数精鋭10名の国内チーム

この2つがあったとします。

数字だけを見れば前者が“圧倒的に上”に見えますが、
実際には後者のほうが コミュニケーション密度も判断の難易度も高い ことがあるのです。

アリババ創業者の Jack Ma もこう言っています。

「優秀な人材を集めて組織にすることが最も難しい」

これは本当にその通りで、
人数が多いことは “規模の大きさ” を示すだけで、マネジメント能力の高さを示すものではありません。

大事なのは、

  • どれほど複雑な状況で
  • どの範囲に責任を持ち
  • チームの成果にどう貢献したか

という 行動の質 のほうです。

転職活動では、人数よりも“何をどう動かしたか”を説明できるほうが、
はるかに評価されます。

9. 結論:若手SEは「実際に動かした人数」で書けば十分

ここまで見てきたように、転職サイトが求めている“マネジメント経験人数”とは、
若手に対して「部下が何人いたか」を聞いているわけではありません。

SIer の現場は、多重構造によって人数が見かけ上膨らんでしまうため、
“規模” と “責任範囲” がどうしてもズレてしまいます。
そのせいで、若手ほど「何人と書けばいいのか」で迷ってしまうわけです。

しかし本質はとてもシンプルです。

“自分が成果に責任を負っていた人数”を書けば、それで十分。

たとえ5名以下でも、それは「日常的に動かしていたメンバーの数」という立派な事実です。
そして、その背景にあるプロジェクト規模を補足できれば、
あなたがどれほど複雑な現場で動いていたのかは自然と伝わります。

最後に要点をまとめると、こうなります。

✔ 若手SEは「5人以下」でまったく問題ない
✔ 転職サイトが知りたいのは“組織規模感”と“責任範囲”
✔ SIerで300人動いていても、それを書く必要はない
✔ 盛るよりも「説明できる数字」のほうが強い
✔ 迷ったら「直接指示した人数+プロジェクト規模」で書けば誤解されない

マネジメント経験の項目は、多くの転職者が最初につまずくポイントです。
でも、一度“何を聞かれているか”が腹落ちすると、むしろ自分の経験を整理する良いきっかけになります。

あなたが動かしてきた人数は、たとえ小さく見えても嘘ではありません。
その人数の中でどんな役割を果たしてきたか――それこそが、面接官が本当に知りたいことなのです。