SE2年目の夏、本気で会社を辞めようと思っていました。
転職サイトに登録し、8社ほど面接を受け、いくつか一次面接も通過した――
でも、最終的に僕は残留を選びました。
そして2ヶ月ほど経った今、「残ってよかった」と感じています。
「じゃあ転職してないお前が、一体何を書けるんだ?」と思うかもしれません。
でも、“転職に踏み切らなかった人間にしか見えない景色”も確かにあります。
この記事でわかること
最初に、この先でお話しする内容をざっくりまとめておきます。
- 2年目SEが転職活動をして、最終的に残留を選んだ理由
- 第二新卒市場で「2年目SE」は思ったより中途半端に扱われるという現実
- SESや別SIerなど、転職先候補のイメージと現実のギャップ
- どんな人は第二新卒で転職した方がよくて、どんな人はまだ残った方がいいのかの目安
- 転職エージェントとの付き合い方
- 残留を選んだ場合に、どうやって「今の会社を利用して」次のキャリアにつなげるかという考え方
僕がSIerを辞めたいと思った理由(前提)
まずは前提として、なぜ僕が「辞めたい」と思うところまでいったのかを簡単に共有させてください。 理由は色々ありました。
- 人間関係への若干の不満
- 将来このままでいいのかという漠然とした不安
- 転職への単純な憧れ
……と、細かく挙げればキリがないのですが、いちばん大きかったのは、やはり次の一点でした。
業務量の多さ+残業時間制限のせいで、サビ残が常態化していたこと
サビ残でやっていたのは「単純作業」だけじゃない
また、僕がサビ残でやっていたのは、いわゆる若手の単純作業だけではありません。
「調査」「開発」「調整作業」「テストケースの洗い出し」etc.
それなりに頭を使う仕事も多かったです。
だからこそ、最初のうちは自分にこう言い聞かせていました。
「これは自習みたいなものだ。将来のための投資だ」
でも、このブログを書いたり、個人開発をする時間が増えてくると、 「このサビ残の時間を、自分の活動に使えたらどれだけ良いんだろう」 と思うようになり、転職活動に踏み切ったというわけです。
働き方のギャップに気づいてしまった
さらに追い打ちをかけたのが、「周りとの働き方のギャップ」でした。
同じ会社の中にも、
- ほぼ毎日、定時で帰る人
- 日中はゆるく働き、残業で“生活残業”として稼ぐ人
- 昼休みも削って働き続ける人
がいる構造に気がつきました。
そして僕は完全に、「昼休みも削る側」でした。
コンビニ飯を片手にPCに向かったり、平日の睡眠時間が足りず、昼休みに昼食を取らず爆睡して帳尻を合わせたり……。
多分、社畜サラリーマンはみんなこんな感じなんでしょうが、
そうでない働き方をしている人たちもいると知っていたので、
「自分が今のまま搾取され続けたくない」
という思いが強くなり、転職活動に踏み切りました。
2年目SIerが実際にやった転職活動の流れ
エージェント登録から面接まで
大学時代に、「中途採用でエージェント使わないのは情弱」みたいな話を聞いたことがありました。 そのため、素直にそれを信じて、
- ビズリーチ
- レバテック
- 口コミを見るために OpenWork に課金
といったサービスを使って活動を始めました。
登録してすぐ、企業やエージェントからスカウトメールが大量に届きます。
ただ、企業に直接返信すると一気に選考が動き出しそうで怖かったので、
基本的にはエージェント経由でやり取りし、面接に進んでいきました。
どんな企業を受けたのか?
正直に言うと、「行きたい業種」は特にありませんでした。
サビ残が嫌なだけで、仕事内容自体には大きな不満がなかったからです。
というのも、現職の環境はこんな感じです。
- プライムベンダー
- いわゆる上流工程にいて、エンドユーザーとも会話できる
- 開発・テスト・インフラ・保守運用まで一通り関われる
- 同年代のSEと比べると、待遇(給与や福利厚生)も良い方
なので、
「適当に転職したら、自分の自由時間は増えるかもしれないけど、待遇は落ちるよな……」
という状態でした。
この思考の整理ができた時点で、正直転職活動の意味を見失っていたのですが、
エージェントに言われるがままに「職務経歴書」「履歴書」を書き、とりあえずSESや別のSIerなどを中心に受けました。
転職理由を「ひねり出す」ようになっていった
そんな状態で面接を受けてもうまくいくわけもなく、
何度か落ちていく中で、僕は次のような転職理由を“作る”ようになりました。
- 顧客折衝だけでなく、開発がしたい
- フルスタックエンジニアになりたい
- 暫くは開発をやりつつ、将来はPMになりたい
もちろん、全部ウソではありません。
ただ、本音の一番深いところにあるのは「サビ残が嫌だ」で、
そのギャップに、ずっと違和感を感じながら転職活動を続けていました。
新卒の就活では、「内定をとる」がゴールだったので、
ある程度きれいな理由を“でっち上げる”のも戦略としてアリだったと思います。
しかし、転職活動は違います。
- 内定の保有期限はだいたい1週間程度
- 日中はサラリーマンとして働きながらの活動
- 「とりあえず内定」がゴールではなく、「条件に納得できるか」がゴール
です。
しかも、自分が目指しているのは
「高待遇」かつ「サビ残するほど忙しくない環境」
なので、たいして興味のない企業の内定を、嘘まじりの志望動機で取ったところで、ほとんど意味がありません。
面接で見えた“第二新卒転職の現実”
8社ほど面接を受けてみて、はっきり分かったことがあります。
それは、「SIer 2年目」は、思った以上に“中途半端なポジション”だということです。
ここでは、その中でも特に印象的だったポイントを4つに絞ってまとめます。
1. 開発経験をアピールしても「ほぼ新卒扱い」
僕自身は、
- 設計以降の工程で30回以上案件を回した経験
- 情報系の大学で論文を書いた経験
- 個人開発でアプリも作っているし、ポートフォリオも提示
……と、それなりに「経験はある方」だと思っていました。
しかし、面接で返ってくるのは、
「まずはテスト(単体テスト)からお願いすることになると思います」
という言葉でした。
ここで言う単体テスト(UT)は、ざっくり言うと、
決められた手順通りに画面を操作し、
動作のたびにキャプチャを撮ってExcelに貼ることで、
「ちゃんと動いている証跡」を残していく作業
です。
新人の最初の仕事としてよく渡されるアレですね。
UTを見下しているわけではないのですが、SIerで上流寄りの工程もこなしてきた2年目としては、
「UT要員前提で見られるのは、さすがに違うのでは?」
と感じました。
2. 「技術を選びたい」と言うとマイナス評価になりやすい
エージェントを通した転職活動では、合否連絡と一緒に「落ちた理由」も教えてもらえます。
僕の不合格通知のフィードバックには、こんなコメントが書かれていました。
「技術を選びたがっていることに違和感を覚えた」
それを受けてエージェントからも、
「第二新卒なんだから、なんでもやります!という姿勢を見せた方がいいですよ」
と言われました。
ただ、僕の感覚としては、
- SIerで、設計・開発・テスト・運用の一通りを何度も経験している
- 個人開発で、すでにいくつかの言語で開発経験があるし、ポートフォリオも提示している
という背景があるので、
「完全未経験として扱われるのは、さすがに違うのでは?」
という違和感がずっと残っていました。
“経験者として扱ってほしい”僕と、“第二新卒枠として扱いたい”企業側のズレが見えた瞬間です。
3. 希望言語ではなく、「今使える技術」からスタートするのが基本
多くの面接で言われたのが、
「まずは、これまで使ってきた技術スタックの案件から参画してもらう」
という方針でした。
例えば、
- 「Javaの案件に挑戦したい」と伝えても、
- 「まずは今の言語で経験を積んでから」という温度感
このあたりの話を聞いていて、ふとこう思いました。
「これ、自社で異動願い出すのと、そんなに変わらなくない?」
もちろん、会社によって差はありますが、
- 転職すれば“技術スタックを自由に選べる”
- SESなら“案件ガチャで当たりを引けばいい”
という甘いイメージは、かなり修正されました。
4. SESでも“案件ガチャ”はそこまで自由じゃない
僕の本音ベースの転職軸はかなりシンプルで、「サビ残しない働き方をしたい」でした。
そのための案として、「SES企業で“当たり案件”を引くまで渡り歩く」という構想も頭の片隅にありました。
そこで面接では、かなり意識的に、
「案件チェンジはどれくらいの頻度でできますか?」
という質問を投げていました。
返ってきた答えは、だいたいこんな感じです。
- 早くても 1年後
- 会社や案件によっては 2〜3年は同じ現場
- 長い人だと 5〜10年同じ案件
SIer側から見ていても、パートナー社員の入れ替えはそこまで激しくないと感じていましたが、
「希望すればすぐ別案件に移れる」
というのは、完全に自分の勘違いであることが分かりました。
これは推測ですが、
- 同じ人を同じ案件に長く入れた方が、SES企業的には利益が安定する
- クライアントとの契約単価交渉もしやすい
といった事情もあるのだろうな、と感じます。
(ちなみに、派遣単価が上がっても、SES社員の給与にそのまま反映されるわけではありません)
結局のところ、
「SESに行けば案件ガチャで楽に勝てる」は、かなり危うい発想
だと理解しました。
僕が“残留”を選んだ理由
ここまでが、僕が転職活動を通じて見た「第二新卒のリアル」です。
じゃあ、なぜそのうえで残留を選んだのか。
理由は大きく3つあります。
1. 2年目転職は、リスクの割にリターンが薄いと感じた
まず、客観的に見ると、2年目は経験者としてはまだまだ中途半端に見られます。 かと言って、完璧な新卒扱いでもないので、完全に育てて貰えるフェーズでもありません。
ただし、給与はほぼ新卒と同様です。
そして何より重要なのは、
2社目も早期退職すると、今後一生「またすぐ辞める人」扱いされる
というリスクです。
リスクの割にリターンが少ないというのが、第二新卒の現状かなと思います。
2. 僕の転職理由は「環境」ではなく「働き方」の問題だった
本音で言えば、
「サビ残を無くしたい」「自分の活動(ブログ・個人開発)にもっと時間を使いたい」
というのが私の転職理由です。
そのため、
「仕事内容を変えたい」「待遇を上げたい」
といった、「会社そのものを変える必要がある」レベルではなかったんですよね。
それなのに、面接では格好をつけて、
「フルスタックエンジニアになりたい」
「将来はPMとしてキャリアアップしたい」
みたいな理由を話している自分に、だんだん違和感を覚え始めました。
「こんな薄い理由で転職しても、絶対どこかで後悔するよな……」
と思い、ブレーキがかかった感じです。
3. 転職活動を通じて、「現職のまだ使える部分」も見えてきた
正直、NRIやNTT Dataのような、
「新卒時に届かなかったような企業」から内定がもらえるなら、
2年目でも転職する価値はあると思います。
ただ、僕が面接していたのは、別のSIerやSES企業など、
スケールも待遇も現職とそこまで変わらない世界でした。
ただし、
- 年収は良くて今と同等かそれ以下
- 裁量も、高確率で今より小さくなる可能性が高い
という前提付きです。
そう考えると、今の会社で給料をもらいながら、 自分の時間を最大限“自分の活動”に投資した方が、長期的には良いという発想になり、残留を選びました。
どんな人が第二新卒で転職した方がいいのか?
ここからは、僕なりの結論です。
転職を“推したい”ケース
次のような人は、第二新卒でも転職を前向きに検討していいと思います。
- 現職の待遇(給与・福利厚生)が、同年代のSEと比べて明らかに低い
- ハラスメントや違法労働など、健康やメンタルを確実に削られている
- 2社目の候補が、今より明らかに“格上”かつ「やりたいこと」と一致している
- すでに「やりたい領域」がはっきりしていて、現職ではほぼ絶対にそこに行けない
こういう場合は、「石の上にも三年」はむしろ毒になりうる、と感じました。
慎重になった方がいいケース
逆に、次のような人は転職を急ぎすぎない方がいいと感じます。
- 給与や福利厚生にはそこそこ満足している
- 不満のメインが「人間関係」や一時的な配属
- 自社内で異動や働き方の調整をすれば、ある程度は解決できそう
- 「なんとなく不安」「みんな転職してるから自分も…」くらいの温度感
転職について色々調べてみて気づいたのは、
「現職を100%最高だと思ってる人なんて、ほぼいない」
という当たり前の事実でした。
だからこそ、給与・人間関係・成長機会・社格といった要素のうち、 このうちどれか1つでも「まあ悪くない」と思えるものがあるなら、 一度立ち止まってもいいのかなと、今は思っています。
「石の上にも三年はもう古い」という言葉もよく見ますが、 2年目の夏に転職活動をした身としては、
「2年目転職は、まだまだ万能カードではない」
というのが、正直な感覚です。
転職エージェントは“味方”ではなく、ビジネスパートナー
最後に、転職エージェントについても少し触れておきます。
すでに色々なところで言われている話ではありますが、あらためて書くと、エージェントはあくまで「あなたの味方」ではなく、「ビジネスパートナー」です。 僕がお会いしたエージェントさんたちは、人柄としては良い人が多かったですし、話していて不快になるようなこともほとんどありませんでした。 ただ、会話の空気は終始一貫して、「この人をどうやって転職まで持っていくか」という方向に向いていました。 いい・悪いではなく、彼らのKPIがそこにある以上、当然のことだと思います。
僕らSEが、仕様が決まればどんなに微妙な機能でもとりあえず作るのと同じで、エージェントもまた、どんな背景の人でも「転職という成果」に持っていくのが仕事です。 だから、「あなたは絶対転職した方がいいと思いますよ」「今の市場なら、すぐ決まりますよ」といった言葉が自然と口をついて出てくるし、 基本的には転職を後押しする方向で話が進みます。
ここで大事になるのが、「自分の中の判断基準をどこまで固めてから会うか」です。
たとえば、
- 給与はこれくらい上がるなら検討する
- 逆にここを下回るならどれだけ推されても行かない、
- ハラスメントや健康上の問題がない限り「今より明らかに条件が悪くなる転職はしない」
……といったラインを、自分なりに決めておきます。
こういう“レッドライン”がないままエージェントに会ってしまうと、相手のロジックや雰囲気に引きずられやすくなります。 逆に、自分の基準がはっきりしていれば、「この条件なら話を聞いてみてもいい」「ここを超えないなら今日は情報収集で終わり」と、 冷静に線引きができるようになります。
エージェントは敵でも味方でもなく、「情報と機会を提供してくれる営業担当」くらいの距離感で見ておくと、ちょうどいいのかなと感じました。
まとめ:迷うなら一度動いてみて、それでも残るなら“自分の時間”に投資しよう
以上、転職活動をしたけれど、最終的に残留を選んだSIer2年目の話でした。
転職活動をやめてからしばらく経ちますが、今のところ後悔はありません。
- 平日は正直、家に帰って寝るだけの日も多い
- それでも、睡眠時間を除けば週に20時間、月に100時間弱の自由時間はある
そう考えると、
「まずはこの時間を、自分の活動のために全力で使い切ってから文句を言おう」
と思うようになりました。
転職に迷っている若手SIerの方へ。
- 第二新卒で転職するのは“アリ”だけど、“必ずしも正解”ではない
- 残留を選ぶのも、“逃げ”ではなく立派な戦略の一つ
だと、僕は感じています。
迷っているなら、一度転職活動をしてみるのは大いにアリです。
ただし、その結果として「現職に残る理由」がはっきりするケースも、確かに存在します。
もし、僕と同じように現職残留を選んだのであれば、
そこからは「会社に使われる」のではなく「会社を使う」側に回っていきましょう。
将来の独立や、自分のプロジェクトのために。



