2025年8月ごろ、本気で会社を辞めようと思っていました。 転職サイトに登録し、8社ほど面接を受け、1次面接をいくつか通過したりもしました。ただ、結果的には自社に残る道を選びました。
「結局転職してない奴が転職に関する記事なんて書けるのか?」と思われるかもしれませんが、SIer2年目という転職するには早い時期に動いた僕だからことかけることがあると思っています。
この記事では、実際に転職活動をして気づいたSIer2年目のリアルをまとめます。同じように「辞めたいけど、転職していいか迷っている」という人に届けば嬉しいです。
なぜ新卒で入ったSIerを辞めようと思ったのか
理由はいくつかありますが、最大の理由は業務量が多すぎてサービス残業が常態化していたことです。大学時代は、自分がサビ残をすることになるなんて思いもしませんでしたね。
いわゆる単純仕事をサービス残業でやるわけではなかったので、 「これは自習だ」と思い込ませていた時期もありました。 でも、このブログのような個人での活動時間が増えるにつれ、 「このサビ残の時間を自分の活動に使えたらどれだけ良いだろう」と思うようになりました。
それに、部署によってはぬるく働いて定時帰りをしたり、定時にサボった分残業でカバーして残業代もGet!みたいな働き方をしている人がいます。 その一方、自分はコンビニ飯片手にお昼休みも仕事をしたり、平日寝れてない分昼休み爆睡したりしている--そんな毎日。
なんか違うなって思ったんです。自分が努力しても環境を変えないとどうにもならないと。
このままだと会社に搾取されるだけだと思い、転職活動に踏み切りました。
SIer2年目が転職活動で見えた“リアル”
大学時代に「中途採用ではエージェントを使わない方が情弱」と聞いたことがあり、素直にそれを信じて、ビズリーチ・レバテックを使って活動を始めました。口コミを見るためにOpenWorkにも課金。 登録してすぐに、企業やエージェントから大量のスカウトメールが届き、いくつか返信してやり取りを経たのち、面接へ進みました。
どんな業種を受けたのか?
正直、行きたい業種なんて特にありませんでした。 サビ残が嫌だっただけで、仕事内容には不満がなかったからです。
今いる会社はプライムベンダーで、いわゆる上流工程にあり、エンドユーザーとも会話できます。そして若手ながら、開発・テスト・インフラ・保守運用すべてに関わっています。関わり方も自由で、実際に手を動かして調査してもいいし、パートナーに指示を出しても良い。割と裁量は大きめなんじゃないかと思っています。(これが業務過多の原因なんですが笑) しかも福利厚生を考慮しても、同年代より待遇は高めだと思います。
だからこそ、「何のために転職するのか」がわからなくなっていました。 それでもエージェントは「強みを掘り下げましょう!」とテンプレ質問を繰り返す。結果、受けたのはSESや別のSIerばかりでした。
──多分、同じように「辞めたい理由はあるけど、行きたい会社はない」という人、多いんじゃないでしょうか。
別にSESやSIerが悪いと言っているわけではありません。 ただ、目的もないまま今の会社を出るのは、どうにも違う気がしていました。
そんな状態で面接を受けても前に進むわけがなく、何度か面接に落ちたりもしました。ただ、面接に受からないと話にならないので、次第に僕は以下のような転職理由を“作って”話すようになっていました。
- 顧客折衝だけでなく、開発がしたい
- フルスタックエンジニアになりたい
- 暫くは開発したいが、将来はPMになりたい
嘘ではないけれど、やはり最大の理由は「サビ残が嫌」。 これにつきます。 だから、この転職理由を面接で話すときは、 違和感はずっと拭えませんでした。
転職理由を言語化できないと、面接以前に自分を見失う。 これも、やってみて初めて気づいたことです。
面接を通して感じた転職市場の壁
8社ほど面接を受けましたが、受ける前と後では明らかに見える世界が変わりました。SIer2年目の転職は、思っていた以上に“中途半端”です。
箇条書きすると以下のような感じですね。
- 開発経験をアピールしても新卒扱いされる
- 「これがやりたい!」と言うと生意気だと思われる
- すでに経験のある言語からしかスタートできない
開発経験をアピールしても「新卒扱い」
自分はすでに要件定義以降の工程であれば30回以上経験がありますし、 情報系の大学で論文執筆経験もありますし、自己研鑽で個人アプリの開発もしています。
それにも関わらず、テスト工程からをやってもらう可能性が高いことを示唆されました。それも面接官の話す意味的に、単体テスト(Unit Test)を意味していました。
Unit Test(UT)とは、決められた手順に沿ってシステムを操作して、一つの動作(ボタン押下etc.)の度に画面のキャプチャをペタペタexcelに貼り付けるみたいな仕事です。そうやって正しく画面が動くことを確認して、証跡を残すという作業です。SIerやSESにおいて、新人が配属されると最初の仕事として渡されること多い工程でもあります。なぜなら業務知識、IT知識がそれほど問われる作業でもなく、言ってしまえば誰でもできる仕事だからです。 ※私は最初の仕事は、全然別の雑用でしたがここで話すには長くなるので省略します。興味あるの方は、このブログを散策してくれれば喜びます 笑
正直、傲慢かもしれませんが、UTからはないだろうと思いましたね。 面接で私の伝える力が低かったのもあるかもしれませんが、いくら2年目と言っても大手SIerで上流工程をずっとやってきた身としては、UT専属部隊として数ヶ月仕事するのは流石に違うと思いました。
※別に自分はUTを見下しているわけではありません。ただ、それなりにすでに経験があると思っているにも関わらず、完全新卒と同じような見られかたをするのに違和感がありました。
「なんでもやります」姿勢を求められる
これは、面接でというより、エージェントから言われたことです。 ある面接が不合格だったのですが、面接官がコメントで言ったことが、 「技術を選びたがっていることに違和感を覚えた。」とのことでした。
それに対して、エージェントから「あなたはまだ若手なんだから、なんでもやります!という姿勢を見せることが大切だよ」と言われました。
それに対しても、私はやっぱり違和感がありましたね。 私の中では、私は経験者採用を受ける想定でした。もちろん、職場の5年目とか10年目の社員に比べると私の経験は本当に微々たるものではありますが、キャリアについて一丁前に「こういうことをやっていきたい」と語っていいくらいには、業界について既になんとなく知っていると自負していました。
それにも関わらず、「なんでもいいからやります!という姿勢を見せろ」とは、変ではないですか?そりゃ、私が未経験の業界に飛び込むとなったら、仕事を選ぶような態度は生意気かもしれませんが、私はすでにいくつかの言語で開発経験がありますし、設計、開発、テスト、運用という要件定義以外の工程には全て何度も関わっています。
そんな状況なのに、まるで本当に新卒のように扱われることには大きく違和感がありました。
経験のある言語からしか始められない
これも雇う側からすれば当然かもしれませんが、多くの面接で「すでに経験のある言語の案件から参画してもらう」と告げられました。 例えば、私があまり経験のない言語(Javaなど)の案件を希望しても、その希望通りは配属されないということです。
そういう話を聞くと、「結局、自社で異動願いを出すのと変わらないのでは?」と思いました。実際、自社でも異動願いは出せますが、その案件や技術に関する知識を自習して意欲を見せない限り、異動は容易ではありません。
転職先の企業からしてみれば、転職者は“どんな仕事の仕方をするのか不明”という状態な訳ですから、むしろ内部での移動より厳しい目で評価されることになると思います。であれば、既に経験のある言語から始めてもらう、という形になってしまうのだろうな、と感じました。
転職の動機をより明確に語るには、 「なぜ転職したいのか」「なぜそれが現職では叶えられないのか」 この2点を自分の中で言語化することがほぼ必須なのだと実感しました。
言われてみれば当たり前のことですが、 「転職すれば案件を変えられる」と思っていた当時の自分からすると、 それは意外な現実でしたね。
SESでも思ったより案件移動の敷居が高そう?
私の本心での転職活動の軸は「サビ残をしない」でした。 そのため、「SES企業で当たりの案件を引けるまで渡り歩く」という選択肢も少し考えていました。 そこで、面接では案件チェンジがどれくらいの頻度でできるのかをよく質問していましたが、返ってきた答えは意外なものでした。
SESはSIerより案件移動の敷居が低いと思っていたのですが、 実際に質問してみると「早くても1年後」「会社によっては2〜3年は同じ案件にいてもらう」「長いと5年~10年」という回答が多かったです。
SIerで働く身としても、パートナー社員の入れ替えはそこまで激しくないと感じていました。ただ、早い人は1ヶ月経たずに辞めていくこともあります(詰められている様子を見るのは正直つらいです)。 なので、希望すれば別案件にすぐ入れるのだと思っていましたが、1ヶ月とかで辞めるのは例外ケースのようですね。
これは邪推なのですが、やはり同じ案件に人材を派遣した方が、SES企業的としては安定して利益を出せるからだと思います。私は下っ端SEなのであまり予算周りに詳しくありませんが、同じ案件で同じ人を雇っていると派遣料の価格交渉が発生します。2,3ヶ月ごとに、時給500円上がるみたいな会社もあるようです。
※派遣料が上がるだけで、SES社員の給与とは関係ないです
なので、SES企業であっても案件ガチャは免れないのかなと思いました。
なぜ残留を選んだのか?
残留を選んだ理由は、上記のリアルを知ったのと、やはり、2年目転職のリスクの大きさがあったからです。
2年目で転職すると、次の会社では最低3年はいなければキャリアに傷がつく。そして、仕事内容にも給与にも特段の不満はない。 要件定義を少し経験したいとは思いますが、それも個人開発で補える。
IT業界は、スケールを無視すれば全部自分でできてしまう世界ですからね。笑
もう一つの理由は、私自身転職の軸が決まりきらなかったのも原因です。 自分でも本心なのか怪しい転職理由を述べて面接の受け答えをしていましたが、徐々にこんなんで転職しても後悔するだけじゃないかと思い始めました。もちろん、NRIやNTT Dataみたいな新卒時に手が届かなかった会社に内定をもらえるのであれば、転職してもそれは単純なキャリアアップであり、意味があると思います。
ただ、わたしが面接していたのはそういう企業ではなく、今と同じようなSIerやSES企業でした。間違いなく福利厚生を含めた年収は下がりますし、そんな中転職をしてしまって、本当に後悔がないのかと思い始めました。
あと、転職活動に時間を取られて残業時間が減り、業務に影響が出始めたのも原因ですね。笑
なぜ内定まで走らなかったのか?
理由は2つあります。
-
すでに残留を決めていたから。
一次面接を何度も受けた時点で、中途採用の空気は十分に経験できたと思いました。本気で転職するときは、もっと納得感のある理由で臨みたい。 -
エージェントのクロージングを避けたかったから。
転職エージェントは「転職させてナンボ」。内定を取ると営業が強まります。断るにも体力がいるので、早めに線を引きました。
まとめ:転職活動をして気づいたこと
以上、転職活動をしたけど残留を決めたSIer社員の話でした。 転職活動をやめて2週間ほどが経ちますが、特に後悔はないです。
今暫くは今の会社で働こうと思います。あと、今は何より自分の活動を大切にしたいですね。いくら平日は、家で寝るしかしないくらい忙しいと言っても、週に自由は時間は睡眠時間をのぞいて20時間はあります。1ヶ月にすると100時間弱です。それだけあれば、なんかはできますよね。
まずそれをしっかり使い切ってから文句を言い始めようと思っています。
転職を考えている若手SIerの参考になったでしょうか?私は2年目の状況で転職活動しましたが、おそらく3年目でも同じような状況になるのではないかと感覚的には思います。4年目くらいからは経験者としての採用になりそうですね。(感覚ですよ)
あと、転職を迷っているSIer若手社員に言いたいこととしては、 転職活動を一度してみれば良いということです。
現職が忙しければ忙しいほど、転職活動は大変になります。 私も、0時に家に帰ってきて、職務経歴書を書いて3時に提出、6時に起床して出社、、みたいな生活を一時期していました。かなり辛かったですが、転職活動を通じて、現職に残る意味についても考える機会になりました。
多分、SIer勤めで仕事が大好きなんて言っている中堅以上の社員はいないと思います。(偏見)顧客と上司、パートナーの間で板挟みになり、 システムへの愛情も薄れていく。若手だと、技術が好きな人も多いと思いますが、そういう人は往々にして個人開発にのめり込んでいると思います。私もそっち側です。
でも、個人開発だけでは飯を食っていけないから、、仕事をするんですよね?仕事なんて楽しいもんじゃなくて、誰かがやりたくないからお金もらってやってるんです。
そういう当たり前のことに気づいたのは、転職活動したからでした。 迷ってる人は一度転職活動してみてください。
もし、僕と同じように現職残留を決意したのであれば、 そこから頑張っていきましょう。将来の独立に向けて。

