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SIerで「花形」とされる仕事とは?現場の視点で語る人気ポジション

投稿日: 2025-06-02 | カテゴリ: SIer

どの業界にも「花形」とされる仕事があります。 SIerにおいても、人気の高いポジション・人気な案件・仕事内容があります。 今回は、SIer業界で「花形」とされる仕事とはどのようなものなのか、また、逆にあまり人気がないとされる仕事についても、 私の経験や主観を交えつつ紹介していこうと思います。


これからSIerに入社し、配属を控えている方にとって、どんな仕事が人気なのかを知ることは、キャリアの方向性を考える上で重要です。 本記事がその一助になれば幸いです。


花形とされる仕事

1. 自社プロダクトの開発・運用保守

SIerといえば受託開発のイメージが強いですが、一部では「自社プロダクト」のようなものを抱えているケースもあります。

ここでいう「自社プロダクト」とは、BtoC, BtoB向けの自社製品に限らず、 特定の顧客企業向けに独占的に開発・提供している大規模な業務システムなども含みます。

こうしたプロダクトは実質的に社内製品のように扱われ、長期にわたって開発・運用保守が継続されるため、安定的な収益源=「稼ぎ頭」となる存在です。 例としては、あるクレジットカード会社のための決済システムなどです。こういうのは一度あるベンダーが開発したら、ずっとその会社が運用保守も担いますので、 ここではそれを自社プロダクトと呼びます。

このようなプロダクトのチームは、社内での評価も高く、出世コースに乗りやすい傾向があります。 そのため、配属希望が多く、「花形部署」とみなされることが多いです。

雑に言えば、売上が大きい部署は花形、と認識しておけば間違いないと思います。

2. モダン技術を用いた開発案件

昨今では、AWS・Azure・GCPといったクラウド技術を中心に、 TypeScript・Next.js・Go・Kotlinなどのモダンな言語やフレームワークを用いた開発が増えています。

こういった技術を使える案件に関われることは、エンジニアとしてのキャリアアップにも繋がるため非常に人気があります。 SIerの特性上、レガシーシステムの保守案件が多いため、モダン技術に触れられる機会も少ないです。

私自身も、こうした現場に強い憧れを持っています。

※なお、大手SIer(例:NRI、NTTデータ)では、新卒でも一定レベルの技術スキルを持って入社する人が多いため、 比較的モダン技術へのアクセスはしやすいかもしれません。

3. 新規事業の立ち上げ

どの業界でも、新規事業の立ち上げは「やりがい」や「チャレンジ精神」を求める人にとって魅力的な仕事です。 作業がマニュアル化されている仕事と違ってイレギュラーが発生するため、キャリアアップを求めるSEからも非常に人気な職種になります。

特にSIerにおいても、大企業での新規事業の立ち上げに関わることができる機会は非常に貴重で、 スケールの大きなチャレンジとなるため、社内でも評価されやすいです。

ただし、注意点もあります。 それは「予算が確保されているかどうか」です。 新規事業を立ち上げるといっても、実際に動き出すには十分な予算と支援体制が必要です。 表向きは立ち上げと言っても、予算が出なければプロジェクトが途中で頓挫するケースも珍しくありません。

配属前に内部事情を完全に調べることは難しいですが、事前に「どれくらいの規模感で進んでいるか」や「どんな体制なのか」などを見極めることが大切です。

4. データ分析関連業務

近年注目されている分野のひとつが「データ分析」です。 ビッグデータの活用や、AI・機械学習を使った予測モデルの構築など、技術的にも難易度が高く、 専門性の高い仕事が多いため、アカデミック志向の強いエンジニアから人気があります。

一方で、私自身は数学や統計があまり得意ではなく、データ分析で本当にビジネス価値を出せるのか?と懐疑的に感じてしまう部分もあります。

また、初歩的なデータ分析は多くのエンジニアが習得できると思いますが、 「プロフェッショナル」として活躍するには深い知識と経験が求められ、かなりの競争になる印象です。

とはいえ、一度でもデータ分析系の部署に所属していれば、その経験は「錯覚資産」として評価されやすくなります。
そうしたチャンスがあれば、トライしてみる価値は十分にあると思います。

実際に働いていて感じますが、「錯覚資産」は非常に重要です。
上司が多数の部下のキャリアや専門性を深く理解するのは難しいため、 「どの部署にいたか」「どんな資格を持っているか」などの分かりやすい指標が社内評価を左右することは少なくありません。


あまり人気がないとされる仕事

※あくまで筆者の主観です。異論は大歓迎です。

1. 古い技術(レガシー技術)を扱う運用保守

COBOLやメインフレームなど、古いシステムの保守運用に関わる仕事です。 これらは重要なインフラである一方、最新技術に触れられる機会が少なく、キャリアアップの観点から敬遠されがちです。

スキルの市場価値という意味でも、レガシー技術に長く関わることはリスクと考える人も多いです。

2. 顧客からの問い合わせ対応

カスタマーサポート部門とは別に、システムの運用チームや開発チームが問い合わせ対応を行うケースがあります。

この業務は意外と負荷が高く、調査や説明に時間を要することも多いのですが、「開発」としての評価を受けにくいため、不満を感じる人も少なくありません。 特にレガシーシステムの保守では、現場経験の長い方へのヒアリングばかりになり、 「自分ってSEなのかな?」「これって記者の仕事では?」と思ったこともあります。(実体験)

3. マニュアル作成

最も地味な仕事のひとつかもしれません。

特にひどい事例としては、開発はすべて外注に任せ、社内の正社員がマニュアルだけを担当するというケースも耳にします。 そうなると、自分のスキルがまったく伸びないうえ、やりがいも感じにくくなってしまいます。

まじで何してんねんという話ですが。


賛否が分かれる仕事

1. PM(プロジェクトマネージャー)・PL(プロジェクトリーダー)

一昔前のSIerでは、PM/PLこそが目指すべきキャリアパスでした。 今でも多くの会社では、PMやPLが「花形」とされています。

ただし、最近では価値観が多様化し、必ずしもマネジメント志向でない人も増えています。 若手の中には、技術を深めたいという理由で、PMではなく技術スペシャリストやWeb系エンジニア、 ITコンサルタントへのキャリアチェンジを希望する人も増えています。

また、大規模案件のPMになるには10年単位の経験が必要と言われることもあり、その長い道のりに魅力を感じにくい人もいます。

2. 人事

一部の人にとっては、非常に人気のあるポジションです。 会社の根幹に関わる仕事であり、出世ルートに含まれていることもあります。 私自身も人事の仕事に興味はありますが、「人事」と「最新技術を扱う部署」のどちらかを選べと言われたら、迷わず後者を選ぶと思います。

会社に長く勤めて昇進を狙う人にとっては、人事は戦略的な選択肢かもしれません。


まとめ

SIerと一口に言っても、実にさまざまな仕事があります。 今回紹介したように、花形とされる仕事には共通して「技術的挑戦」や「会社への貢献度の高さ」があります。 一方で、地味だけど重要な業務も多く、それぞれに向き不向きがあるのも事実です。

もしこれからSIerに就職・転職しようと考えている方は、自分がどんなキャリアを歩みたいのか、 そのためにどんな仕事に関わるべきかを見極める参考になれば幸いです。