「SIerではITスキルが身につかない」
この言葉を、一度は聞いたことがある人も多いと思います。 そして正直に言えば、その指摘は半分は当たっています。
SIer、とくに一次請けの立場では、
実装や設計よりも「調整」「説明」「管理」が業務の中心になりがちです。
開発やインフラ構築をガッツリ経験できる環境と比べれば、
純粋な技術経験はどうしても限られます。
ただし、それでも私はこう思っています。
SIerであっても、働き方次第でITスキルは身につけられる
私自身、入社1年目のころは
AWS SAAの問題集を開いても、正直ほとんど理解できませんでした。
用語は知っているけど、意味がつながらない。
「これ、何のためにあるんだっけ?」という状態です。
それでも今は、
問題文を読んで「何を聞かれているのか」「どんな構成を想定しているのか」が
少しずつイメージできるようになってきました。
特別にSAAの勉強をやり込んだわけではなく、SEとして実務に向き合う中で、自然と理解できるようになった感覚です。
この記事では、
- SIerという環境でITスキルを伸ばすために意識していること
- 逆に、スキルが伸びにくい働き方
- そして「技術力=評価」ではないという現実
について、実体験ベースで整理していきます。
SIerで働きながらITスキルを身につけるために意識していること
結論から言うと、ポイントはシンプルです。
調整業務で終わらせず、「自分の頭で一段深く考える」こと
SIerの仕事そのものが、
即・技術力につながる設計になっていないのは事実です。
だからこそ、「どう向き合うか」が重要になります。
1. システムの方針を“一度は自分で考える”
一次請けSIerで働いていると、
開発ベンダーからこんな相談を受けることがあります。
- 方針Aと方針B、どちらが良いか
- 既存方式を踏襲するか、変更するか
- 今回は暫定対応にするか、恒久対応にするか
多くの場合、
- ベンダーからメリット・デメリットを聞く
- それを整理して上司に報告する
これで業務としては成立します。
ただ、この動きだけを繰り返していると、
自分の中に技術的な判断軸はほとんど残りません。
私が意識しているのは、 「ベンダーに聞く前に、一度は自分なりの答えを持つ」ことです。
たとえば、
「この設計は運用や将来改修のときに人を苦しめないか?」
という一点だけでも、自分なりに考えてみる。
細かい正解を出す必要はありません。 大切なのは、「自分だったらどちらを選ぶか」を一度言語化してみることです。
最終判断は開発側に委ねるとしても、
考えるプロセス自体が、確実に理解を積み上げてくれます。
2. 障害対応を「依頼」で終わらせない
障害が発生したとき、 SIerの基本動作は「開発ベンダーへの調査依頼」です。 これは役割分担として正しいですし、否定するものではありません。
ただ、ここでも差がつくと感じています。
ログを一切見ないまま依頼するのか、
それとも状況を自分でも少し確認したうえで依頼するのか。
この小さな違いは、後々かなり効いてきます。
もちろん、
- 勝手にシステムを改修する
- 抱え込んで報告を遅らせる
こうした行動はNGです。 まずは関係者に共有した上で、余力で自分なりに調べる。
業務システムであれば、
業務フローやデータの流れ、
「どこが壊れると何に影響するのか」を理解するチャンスでもあります。
技術だけでなく、業務知識まで一緒に積み上げられる点は、 SIerならではの強みだと感じています。
仮説が外れても問題ありません。 後から開発者の調査結果と照らし合わせることで、 「なぜ違ったのか」が学びとして残ります。
ITスキルを伸ばしても、評価されるとは限らないという現実
ここまで読むと、 「じゃあ頑張って技術を伸ばせば報われるのか?」 と思うかもしれません。
正直に言うと、必ずしもそうではありません。
SIerの評価軸は、技術力一本ではないからです。
評価されやすいのは、むしろ次のような力です。
- 複数案件を同時に回す調整・管理力
- 顧客や関係者との折衝力
ここで一つ、補足しておきたいことがあります。
私自身はまだ若手ということもあり、 現時点では「技術的にある程度詳しい」というだけでも、 評価につながっていると感じています。
ただ、周囲を見渡していると、別の構図も見えてきます。
技術にはとても詳しいのに、管理職になっていない人。 一方で、技術にはそれほど詳しくないように見えても、 管理職として出世している人。
SIerでは、この両方のタイプをよく見かけます。
どちらが「あるべき姿」なのかは、正直簡単には言えません。 ただ、個人的に思うのは、 技術に詳しい人というのは、若手の頃に自分で手を動かし、 現場で試行錯誤してきた人たちなのだろう、ということです。
そうした人は、責任感や技術への興味も強く、 中堅になってからも現場をバリバリ回してきたはずです。
一方で、気づけば、 現場で手を動かしてきた人よりも、 現場をあまり回さなかった人の方が出世し、 その人たちから指示を受ける立場になっている。
これが、SIerの多くの現場で起きている現実なのではないかと感じています。
もちろん、技術にもめちゃくちゃ詳しい管理職の方もいます。 それが一番理想的な姿だと思っていますし、 ここで書いているのは、あくまで一般論です(笑)
とにかく本章で伝えたいこととしては、SIerではITスキルだけを伸ばしても評価されるとは限らない、ということです。
それでも、私は技術を優先している
技術か、管理か。
どちらを優先して伸ばすべきかは、正解のない問いだと思います。
一般論としては、
- 技術を伸ばせば、若手のうちから転職市場での価値は高まりやすい
- 管理力を伸ばせば、社内でのポジションは上がりやすく、年次が上がるほど求められやすくなる
という傾向があると感じています。
そのうえで、私は今のところ
技術を優先する選択をしています。
理由はシンプルで、
「技術に詳しい人でありたい」と思っているからです。
また、転職市場という観点で見ても、
「管理力」だけで評価される世界ではないと感じています。
私の個人的な見方ですが、
管理だけで出世しやすいのは、同じ会社に長く留まり続けた場合であり、
会社の外に出ると、結局は
- 技術的な理解があるか
- そのうえで人や案件をマネジメントできるか
という両方を見られる場面が多いように思います。
若いうちは、手を動かして学べる時間も体力もあります。
マネジメントは後からでも学べますが、
一度技術から完全に離れてしまうと、戻るのは簡単ではありません。
- だから私は、
- 「調整しかできない人」にならないよう、
- 意識的に技術に触れ続けています。
まとめ
SIerで働いていても、ITスキルは身につけられます。 ただし、それは自動的に身につくものではありません。
- 受け身で仕事をしない
- 一段深く考える
- 調整業務を学習の入口に変える
この意識があるかどうかで、 数年後の差は確実に開きます。
- 一方で、技術力がそのまま評価につながらない現実もあります。
- だからこそ、自分がどんな価値を大事にしたいのかを考えながら、
- バランスを取りつつキャリアを選んでいくことが大切だと思います。


