はじめに

SIerに入社したばかりの頃、「人月」「人日」という言葉に、どうしても馴染めない感覚がありました。

作業を時間で切り売りし、そこに金額を乗せて価値を定義する。 ITとは、時間効率化・目的達成のためツール・技術であるのだから、 作業の価値は時間ではなくその価値自体で評価されるべきだし、時間で切り売りするものではないのでは?

エンジニアとして何かがズレている。そんな違和感を、確かに持っていたはずでした。 それが今ではどうでしょう。気づけばその感覚は薄れ、「まあ、そういうものだよね」と流せるようになっている。

今回は、なぜその違和感が消えていったのか、そしてSIerの現場で起きている「評価と価値のズレ」について、 自分自身の変化も含めて整理してみたいと思います。

「直さないこと」が最適解になる現場

新人の頃、まず驚いたのはこれでした。

なぜ、明らかに不便な部分が放置されているのか?

UIの分かりづらさ。回りくどい操作手順。誰が見てもおかしい仕様。 改善案はいくらでも浮かぶのに、それを口にしても反応は薄い。

しばらくして分かったのは、直す=一生面倒を見る覚悟が必要だということでした。

  • 改修すれば、その後の問い合わせも自分
  • 想定外の影響が出れば、責任も自分
  • その結果、他のタスクが遅れれば評価が下がる

一方で、システムの質が多少悪くても怒られない。

評価されるのは、納期を守ったか、タスクを滞りなく回したか、進捗をきれいに報告したか。

「見える管理」がすべて
──そんな構造が、そこにはありました。

なぜ、やる気を失っていくのか?

最初は、誰だって思うはずです。

「せっかくなら、いいものを作りたい」

と。

でも、その気持ちは長くは持ちません。 なぜなら、頑張っても評価されないからです。

それどころか、

  • 要件外の改善に手を出す
  • 自主的に深掘りする
  • 本質的な問題に時間を使う

こうした行動は、「余計なことをする人」と見なされることすらある。

結果として、現場に適応した人ほど、言われたことだけをやったり、 目立つ仕事を優先します。

「やってる風」が評価される構造

さらに驚いたのが、「本質的でない仕事」に時間とエネルギーが注がれる風潮です。

  • 実質的に意味のないレビューに時間をかける
  • 本来システムで解決すべき課題を、手作業やマニュアルで対応
  • 「上流工程」という名の、何も作らない・できない領域に逃げる

いずれも、「やっているように見える」ことを重視した行動です。
SIerでは、見える仕事が評価され、見えない努力は無視される傾向が強いように感じます。

だから、いいサービスが生まれにくい

このような文化では、本当に良いサービスを生むのは非常に難しいです。

不具合や使いづらさは、顧客から強く指摘されない限り放置され、指摘されたとしてもコストや稟議の壁で改善が後回しに。 それでも、ユーザーが慣れてしまえば大きな問題にはなりません。 こうして、「まあ、これでいいか」となあなあな運用が続いていってるのかなと感じます。 当の私も、最初は使いづらいと思っていたサービスに違和感を感じなくなっていますし、、、

2次受けへの依頼をするだけの日々

SIer社員の多くは、自分の手をほとんど動かしません。
プログラミング、インフラ構築、テスト設計、さらにはプロジェクトマネジメントすら外注され、「何もできない人」になっていきます。

※もちろん、ちゃんと手の動く社員もいます。

たとえば、サービスでエラーが発生したとき。
一応SIer社員が受付はしますが、実際の調査・修正は2次受けに依頼します。

そして、2次受けに説明させた内容を、そのまま上司に「自分がやった風」で報告する日々…。 圧倒的に2次受けの方が価値を生んでいると、何度思ったかわかりません。

じゃあ2次受けで働きたいのか?

それも正直、嫌です。 自分がある程度技術力を得た状態で2次受けに入り、技術を持たない新卒社員に管理されるのは耐えられない。

なぜなら、レビュー者がしょっちゅう足を引っ張ってくるから。 エラーの原因を説明しても、そもそも前提の知識がなく「そこから教えてください」と言われる。 ポインタとは?コンパイルとは?といった説明から始めなければいけない──これは非常に苦痛です。

自ら手を動かそうとしたものの…

だからこそ、「自分で手を動かそう」と思った時期もありました。 エラーが起きた際、自力で調査して対応できたこともあります。

しかし、他の仕事が滞ってしまい、結果的に自分の評価が下がることに…。
「やはり、自分で調査しないのが正解だった」と痛感させられた瞬間でした。

終わりに 〜SIerで鈍っていく感覚〜

SIerに入社したばかりの頃は、たくさんの疑問や違和感を抱いていました。
それでも、抗うことなく働いているうちに、気づけば「まあ、そんなものか」と思うようになっていた。

かつては、技術を磨き、いいものを作りたいと思っていたのに、今は無難にこなすことが最優先になってしまった。

この記事を書きながら、どんどん自分のモチベーションが下がっていくのを感じました。
もしこれからSIerに入ろうとしている人がいるなら、「どんな現場に身を置くか」が、あなたの未来を大きく左右することを伝えたい。

中途半端な実力のまま、ただ消費される──そんな未来にならないよう、環境選びにはどうか慎重であってほしいと願っています。