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やらない方が評価される──SIerで鈍っていった感覚について

投稿日: 2025-06-15 | カテゴリ: SIer

はじめに

SIerに入社した当初、「人月」や「人日」という言葉に強い違和感を覚えていました。
作業量を時間で見積もり、それに金額をつけていくスタイルに、エンジニアとして何かが違うと感じたからです。

しかし、働くうちにその感覚は少しずつ薄れ、「まあ、そんなものか」と受け入れるようになっていきました。
今回は、なぜその感覚が失われたのか、そしてSIerの現場で起きている“価値のズレ”について、私自身の経験をもとにまとめてみたいと思います。


「改修しないことが普通」な環境

新人の頃、まず驚いたのは「なぜ明らかなバグや不便が放置されているのか?」ということでした。
UIの不親切さや操作の煩雑さ、明らかな仕様ミス…。改善案はすぐに思いつきましたし、それを伝えても反応は薄いものでした。

やがて気づいたのは、直す=一生面倒を見る覚悟がいるということ。
それに時間を取られて他の作業が遅れれば評価が下がるし、そもそも改善しても上司から評価されない。

SIerでは、システムの質が悪くても怒られない一方で、納期やタスク管理など「見える管理」が重視されるという構造があるのです。


なぜ、やる気を失っていくのか?

最初は「良いものを作りたい」と思っていた気持ちが、徐々に削られていきます。
理由は明快で、努力しても誰からも評価されないからです。

むしろ、要件にないことに手を出して他の仕事に遅れを生じさせれば、評価が下がる可能性すらあります。 結果として、「言われたことだけをやる」「人目につく仕事を優先する」ようになっていく。

このような環境では、技術を磨く動機が削がれ、仕事に対する主体性が失われていくのは自然な流れです。


「やってる風」が評価される構造

さらに驚いたのが、「本質的でない仕事」に時間とエネルギーが注がれる風潮です。

いずれも、「やっているように見える」ことを重視した行動です。
SIerでは、見える仕事が評価され、見えない努力は無視される傾向が強いように感じます。


だから、いいサービスが生まれにくい

このような文化では、本当に良いサービスを生むのは非常に難しいです。

不具合や使いづらさは、顧客から指摘されない限り放置され、指摘されたとしてもコストや稟議の壁で改善が後回しに。
それでも、ユーザーが慣れてしまえば大きな問題にはなりません。
こうして、「まあ、これでいいか」となあなあな運用が続いていってるのかなと感じます。 当の私も、最初は使いづらいと思っていたサービスに違和感を感じなくなっていますし、、、


2次受けへの依頼をするだけの日々

SIer社員の多くは、自分の手をほとんど動かしません。
プログラミング、インフラ構築、テスト設計、さらにはプロジェクトマネジメントすら外注され、「何もできない人」になっていきます。 ※断っておくと、ちゃんと手の動く社員も沢山いますよ!

たとえば、サービスでエラーが発生したとき。
一応SIer社員が受付はしますが、実際の調査・修正は2次受けに依頼します。

そして、2次受けに説明させた内容を、そのまま上司に「自分がやった風」で報告する日々…。
圧倒的に2次受けの方が価値を生んでいると、何度思ったかわかりません。


じゃあ2次受けで働きたいのか?

それも正直、嫌です。
自分がある程度技術力を得た状態で2次受けに入り、技術を持たない新卒社員に管理されるのは耐えられない。

なぜなら、レビュー者がしょっちゅう足を引っ張ってくるから。
エラーの原因を説明しても、そもそも前提の知識がなく「そこから教えてください」と言われる。
ポインタとは?コンパイルとは?といった説明から始めなければいけない──これは非常に苦痛です。


自ら手を動かそうとしたものの…

だからこそ、「自分で手を動かそう」と思った時期もありました。
エラーが起きた際、自力で調査して対応できたこともあります。

しかし、他の仕事が滞ってしまい、結果的に自分の評価が下がることに…。
「やはり、自分で調査しないのが正解だった」と痛感させられた瞬間でした。


終わりに 〜SIerで鈍っていく感覚〜

SIerに入社したばかりの頃は、たくさんの疑問や違和感を抱いていました。
それでも、抗うことなく働いているうちに、気づけば「まあ、そんなものか」と思うようになっていた。

かつては、技術を磨き、いいものを作りたいと思っていたのに、今は無難にこなすことが最優先になってしまった。

この記事を書きながら、どんどん自分のモチベーションが下がっていくのを感じました。
もしこれからSIerに入ろうとしている人がいるなら、「どんな現場に身を置くか」が、あなたの未来を大きく左右することを伝えたい。

中途半端な実力のまま、ただ消費される──そんな未来にならないよう、環境選びにはどうか慎重であってほしいと願っています。